忘れていた1万円が出てきた~後編~
忘れていた1万円が出てきた~前編~ の続きです。
覚えのないお金を発見。ラッキー!
でも出処が不明。
入っていた袋を見て、だんだんと記憶が…。
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数年前、父の介護が突然始まりました。
同居の家族は大パニック。
私もときどき実家に行き、
通院に付き添うなどしました。
病院の帰り道、父はよく郵便局に寄りました。
留守番をする私の家族や、数時間かけて通う私を気遣い、
交通費と称してお金を渡してくれたのです。
断っても拒否されるので、半額だけもらうこともあったし、
こっそり父の財布に戻すこともありました。
母はそのことを知っていたようです。
そんな生活がしばらく続きました。
父の身体はゆっくり、着実に弱っていきました。
やがて歩いて病院に行くことができなくなり、
郵便局に寄ることもなくなりました。
お金の管理は同居家族が任されるようになりました。
いつものように実家で過ごしてきた一週間後のこと、
父が救急搬送されたと連絡がありました。
実家から電話で報告を受けて「もう長くない」と感じ、
次の日に見舞いに行きました。
病室の父は思ったよりも元気でしたが、
しばらく実家に滞在することにしました。
母からこんなことを言われました。
お父さんの財布に1万円があるんだけど。
あるはずないのよ、あんた返した?
その一週間前にもらったものです。
私は認めました。
すると母は泣きながら言ったのです。
最後だから…
もらってやってよ…
ゆうちょの袋に入れてくれた1万円、
私も泣きながら受け取りました。
数週間後、父は旅立ちました。
たぶん…放置してたんだろうと思います。
袋のままカバンに、長いこと。
使ってしまうのが忍びなかったことは確かです。
そして、気ぜわしさから確認せずに、
いつの間にか封筒の束に混ぜてしまった。
数年たって出てきた理由は、そういうことだと思います。
父に対しては、語り尽くせないほど、複雑な思いがあります。
でも時の流れとともに、それはふんわりしたものに変わり、
私の中では今、ギュッと凝縮された
“頑固だけど思いやりのあるお父さん”が生きています。

天から私の財布を覗いたのかしら。
令和の米騒動を気の毒に思って「おいしいお米でも買いなさい」
とでも言っているのかしら。
1万円は袋から出して、自分の財布に入れました。
今度はちゃんと使わせてもらおうと思いました。
投稿者プロフィール

- くれたけ心理相談室(高崎支部)心理カウンセラー
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